ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「改めまして、お久しぶり。伶菜ちゃん。」
『お、、お久しぶりです。』
沈黙の時間が暫く続く。
ぎこちない空気を感じていたのはきっと私だけではなかったと思う。
あの夜・・・・ナオフミさんとキスしていた奥野先生のことを
何とも思っていない訳じゃない
でも、あの時は私にも足りない部分があったから
しかも、奥野先生は考えなしに行動する人ではないことは
よくわかってる
彼女の懐の深さだって・・・・
だから、簡単に憎んだり、キライになれない
そうなるほうがきっと楽なんだろうけど
「ここに来たのは何かあった?・・・って聞ける立場じゃないわよね・・・・・伶菜ちゃんや日詠クンに嫌な想いをさせちゃった訳だし。」
私よりもずっと前からナオフミさんのことを大事に想っている彼女。
その人に自分が彼の子供を妊娠したことをどうやって伝えたらいいのか正直戸惑う。
そんな私を気持ちが伝わってしまったのか
「というか、自分のことを先に言うべきよね。」
申し訳なさそうに苦笑いをこぼした彼女。
「私が今日ここにいたのは、名古屋医大の三宅教授からの派遣依頼を受けて、ここで毎週水曜日だけ外来受診を担当しているの。ここのクリニックは椿本先生ともうひとり女医さんがいたんだけど・・・・・その女医さんが産休に入っちゃったからその代打ってとこ。」
『そうなんですか・・・・』
私がようやく口にできた言葉はそれだけで。
続けて何を言えばいいのかやっぱりわからなかった。
上手く立ち回れない私を気遣ってくれたのか
奥野先生は私の表情をじっと見つめながら言葉を続けてくれる。
「そんなのきっとどうでもいいことだよね?ゴメンなさい。でも、伶菜ちゃんにはちゃんと言わなきゃね。正直に私の想いをね・・・・聴いてくれる?」
いつもは感情を露にすることなんてなくて
客観的な視点で常に物事を捉えている印象が強い彼女なのに。
今度は唇を小さく震わせていた彼女。
そんな彼女も珍しかった。
だからこそちゃんと聴いておかなきゃいけないと思った。
彼女の正直な想いというものを。