ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活




「子宮口、あともう少しで全開だから。分娩室に移動しましょう。」

ようやく助産師さんも慌しく自分のところにやってきてくれて。


「動けるか?」

『・・・・うん。』


彼に支えられて分娩室に移動した。

助産師さんから “まだいきまないように” と言われていたのに、
こらえきれずに分娩台の持ち手をぐっと握った。


「手、貸して。」

彼はそう言ってから私の左手を分娩台の持ち手から引き離し、
私がいきんだりしないよう彼の手で優しく握ってくれた。

妊婦さんや患者さん達から “神の手” と言われている彼の大切な手なのに、お腹の痛みや違和感に耐えられず、つい彼の手もグッと握ってしまって。


『・・・ゴメんなさい、ナオフミさんの手、傷ついちゃ・・・・・痛っ・・・うぅぅぅぅぅ・・・・』

「そんなやわじゃないから大丈夫だ」


それを謝ろうとしても陣痛の痛みを堪えるのに精一杯な私の手を
私の力に負けないぐらいの強さで握り返してくれた。
そこから伝わる彼の熱も私と同じぐらい本当に熱かった。


「日詠さん、もう “いきんで” もいいです!私の声に合わせて!」

『・・・・ハい・・・・う・・・う』

「伶菜・・・あと少しだ。頑張れ。」


一緒に頑張っているということもちゃんと伝わってきた。



この時間も
私にとって本当にかけがえのなくて
欲しいもののひとつ・・・だった


ねえナオフミさん

この時のアナタも
私と同じ気持ちでいてくれたのかな
きっとそうだよね?


もしもアナタがいつかこの時を想い出す日が来たら
今度は子供達にも聴こえる声で言ってあげてね


世界で一番ダイスキなお母さん・・・一緒に頑張ろうかって
言ってくれたことを・・・・・





私は絶対忘れない















「伶菜?」




「伶菜・・・・・・どうした?!」




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