ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Hiei’s eye カルテ24:Don’t leave me alone




【Hiei’s eye カルテ24:Don’t leave me alone】



伶菜の出産から3日経った。

ヤマと言われた1~2日は過ぎたが、
伶菜の意識はまだ戻らなかった。


赤ん坊はというと、新生児仮死で生まれ、NICU(新生児集中治療室)に運ばれた。

それでも、橘先生をはじめNICUスタッフの懸命なケアのおかげで、入室してしばらくして蘇生したとのことだった。

橘先生は、
“あともう少し分娩に時間がかかっていたら脳や内臓へのダメージが残っていたかもしれない”
とのことだったが、その後の経過も順調であることを丁寧に説明してくれた。



面会時間が限られているICU(集中治療室)とは異なり
両親ならば24時間いつでも面会できるNICU。

俺は3日間ICUとNICUと行ったり来たりして
意識の戻らない伶菜と生まれて間もない赤ん坊の様子を見続けていた。


『よく頑張ったな。』


開放式保育器の上で静かに眠る赤ん坊は女の子。

まだ心肺機能がやや不安定のせいか
顔も体も若干浮腫んでいるように見える。
鼻に挿入されているチューブからも痛々しさを感じずにはいられない。

けれども、点滴だけでなくそのチューブからミルクを摂取できるようになったことを考えると、やはり橘先生が言っていた通り順調に回復しているようで少しだけ安心した。


未熟児で利用されることの多い完全閉鎖式保育器とは異なり、どこから手を伸ばしても触れることのできる開放式保育器に寝かされている彼女。

点滴のルートや心電図モニターのコードをひっかけないように気をつけながら抱き上げた。


『おっと・・・』

抱き上げ方が今ひとつだったのか、彼女は手足をグラグラさせている。

『こう抱いたほうがいいかも。』

自分の心臓に彼女の頭を近づけるように抱き直した。
心臓の鼓動が聴こえて安心したのかスッポリと納まるような感覚。

目がまだ開いていないものの
伶菜に似た柔らかそうな頬、唇が女の子らしさを物語っていた。


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