お前は、俺のもの。
鬼課長の刺々しい声がした。
「セレブのお嬢の中で、千堂設備の令嬢は無類の男好きで有名ですからね。金持ちの男たちの中で知らない奴はいないでしょう」
その声が聞こえているのか、いないのか。
千堂紗羅はドレスが汚れることも構わずに、這い蹲って広がった写真を夢中で集めている。
「この人はエリック。あ、こっちの人は都築社長…」
写真の相手の名前らしいことをブツブツと呟く、地面に座り込んで長い髪を乱す女性を、私はまるで千堂紗羅とは別人のような感覚で見ていた。
「お、お嬢様!」
少し離れたところから男性の声がした。五十歳代くらいの眼鏡の、黒いスーツを着た人が急ぎ足でこちらに向かって来た。
とても焦った顔で、地面に座る千堂紗羅の体を起こして立たせる。
「お嬢様、しっかりしてくださいませ」
「うふふ」
男性の声に、彼女は写真ばかり見て笑っている。
鬼課長は男性に声をかけた。
「紗羅さんのお付の方ですか」
男性は千堂紗羅を抱えながら、
「お嬢様のお見苦しいところを、大変申し訳ございません」
と、困惑しながら頭を下げた。