お前は、俺のもの。


「紗羅さん。あなたは俺を婚約者にした時点で、もっと俺を警戒するべきでしたね。この俺が、会ったこともない女の素性も知らずに婚約者にさせておくわけ、ないでしょう」

喋り方は静かだけど、体が氷に挟まれているような凍える、上から目線の怒りの声。
──私が千堂紗羅だったら、きっと今頃怖すぎて気絶してるっ。
背中から漂う鬼のオーラに、私は自分を抱きしめて彼の後頭部を見上げた。


「…何が警戒よ、何が素性よ。あなたは私と結婚するの。これが運命なのっ!」

大きな声を張り上げた千堂紗羅に、体がビクリと縮こまる。

鬼課長はポケットから何かを取り出して、大きく上へと持ち上げた。
「紗羅さん。俺とあなたに運命があるなら、俺は何度でも打ち消してみせますよ」
と言って、高く伸ばした手から何かがたくさん落ちてきた。
ヒラヒラと舞いながら地面に落ちたものを見つめた。

写真だ。
十数枚の写真が、アスファルトの上に散らばって揺れている。写真には、二人の男女が仲良さそうに抱き合ったりキスを交わしているものばかりだ。
「?!」
驚いて慌てて口を両手で塞ぐ。しかし、写真をよく見ると、女性は千堂紗羅だ。他の写真を見ると、女性はどれも彼女だが、男性はどれも違う人である。
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