お前は、俺のもの。

「市村係長は優しい人で有名。でもその優しさが老若男女平等であるために、女子たちは彼だけの特別の優しさを求めるんですよね」
「綾乃ちゃんも、やっぱり市村係長を狙ってるの?」
と、私は竜田揚げを頬張って聞いた。
綾乃は苦笑する。
「凪さん、食べながらお話はだめですよ。確かに市村係長は優しいと思うし、ステキなイケメンですよね。でも私の場合は「いつもふわふわ」というより、お互い刺激を与え合いたい相手がいいですね」

──刺激を与え合いたい、か。

大きめのお茶碗を片手に、中のご飯をじっと見つめる。
そういえば、結婚を夢見た元カレと心が痛いお別れをしてから、もう二年くらい経つだろうか。

あの時の私たちの恋愛は、どんなだったのか。
あれから仕事漬けと干物漬けの毎日を送っていたせいか、当時の恋愛事情が記憶から霞んでしまっていたことに、今更ながら気がついた。
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