お前は、俺のもの。
翌日。
母に起こされ、重い体を引きずって会社へ出勤する。
ロッカーの落書き、誰があれを書いたのかは想像できるが、実際に書いている本人を見たわけでも証拠もないので、面と向かって「あなたでしょ」なんて言えない。
ロッカールームの自分の異変のないロッカーを見てホッとする。
昨日、扉の文字が拭いても消えず困っていると、夜間の清掃のおばさんが出勤してきた。
「凪ちゃん、どうしたの」
と言いながら扉を見ると、慌てて仕事で使用する強めの洗剤を持ってきて落書きを綺麗に消してくれたのだ。
清掃のおばさんはとても気さくな人で、見かけた時は少しお手伝いをする程度の付き合いだ。しかし、昨日はさすがに「誰かにいじめられたの?」と子供相手に聞くような素振りで接してきた。
社内を一生懸命掃除してくれる彼女に「大丈夫、大丈夫」と笑って誤魔化したが、これが二度三度と続くなら、きっと噂として社内に広がってしまうだろう。