お前は、俺のもの。

カフェのレセプションパーティーの当日。
会社のセキュリティゲートのところで、隣のエレベーターを待つ社員たちの中に大きな紙袋を持った小堺るみの姿があった。

八月に入って、私の体は朝から夏本番の暑さに苦しめられていた。
たった五分、駅から歩くだけなのに既に全身が汗ばんでいる。それに比べ小堺るみの横顔はしっかりとメイクされ、凛と涼しげな表情さえ見せていた。
少し羨ましい、スリムな体型を見て息が漏れた。
あの紙袋の中には、華やかなドレスが入っているのだろうか。川添穂香を誘ったものだとばかり思っていたが、鬼課長が小堺るみを誘っていたとしても「満島と一緒に行く」という可能性は0パーセントという事実は変わらない。

「おはよう。夏期休暇をとっている人もいるせいか、いつものエレベーター前の混雑は少し緩和されてるみたいだね」

後ろから声をかけられて振り向くと、市村係長が爽やかに笑みを浮かべている。
コットンシャツ一枚で汗を流している私なのに、彼はしっかりスーツを着こなしても額に汗が滲んでいる様子もない。
「おはようございます」
私は小さく挨拶をして、タオルハンカチで首元の汗を軽く押さえながら、エレベーター前の人々の後ろに並んだ。
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