希望の華



一定の間隔で届く小さな動きの中心を探して見知らぬ廊下を歩く。

やがて、一つの部屋の前で空気が変わった。



「ここにいるの?」



小さく問いかけても、さすがに肯定も否定もない。
ただ、同じように空間をかすかに動かす。

この際、稽古道具はどうでもいい。
ただ、“神楽”だけは。



「あの坊主、まだ起きないのか?」

「坊主って...袴を着てましたけど体は確かに女性でした。」


きっと私のことだろう。

ここの人には仮にもお世話になっている。
でも私は何が何でも“神楽”がないといけないんだ。
場合によっては、力づくでとりかえさなくてはならない。


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