僕はペットで離婚を決めました

 そこにはゲージで大人しくしていた筈の小太郎が居た。


「こ、小太郎? どうやって出たんだ? 」

「あら、小太郎。出て来ちゃったの? 」


 美奈が声をかけると、小太郎は美奈に飛びついてペロペロと舐め始めた。


「もう、小太郎ったらくすぐったいじゃない」


 犬と戯れ始めた美奈を見て、謙は言葉では言い表せないモヤモヤ感が湧いてきた。


「小太郎、あのね。これから、とっても大切なところなの。ちょっと、ここに座っててね」


 床に小太郎を置くと、美奈は謙を見た。


 謙はすっかり冷めてしまったようで、背を向けてため息をついていた。


「謙ちゃん、ごめんね。今からできる? 」


 できるわけないだろう!

 と、言いたかった謙だが…。


「ごめん、ちょっと無理」

 と、小声で言った。

「え~? 今日逃したら、来月までチャンスないよ」

「そうだけど、無理だから」

 半分怒ったような、拗ねたような顔をしている謙。


「しょうがないなぁ」

 美奈は楽天的にわらって、パジャマを着始めた。


 謙もパジャマを着て、また寝室をでた。




 キッチンでお水を飲んで、謙は深いため息をついた。

「一度ならまだしも、二度も…。犬を寝室に置くからいけないんじゃないのか? 」


 謙は頭を抱えた。


 

 暫く起きていて、謙は寝室に戻った。


 美奈はぐっすり寝てしまった。


 ゲージの中で小太郎も寝ている。
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