Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
私はその日いつも以上のハイペースでお酒を飲んだことによりそれからの記憶を失っている。
目覚めたのは知らないベッド。

キッチンで朝食を作りながらさわやかな笑みを浮かべる男の声を私は知っている。
私のよく知っている顔に似ているし・・・

(この超絶イケメンは誰?)

昨日の夜は、人生最大と言っても過言ではないくらいに悲しいことがあって、たまたま公園であった瀬戸口と一緒に飲みにいった。そこまでの記憶はあってその先の記憶は一切ない。
元々、お酒自体は嗜む程度で、飲みに行くといってもビールと甘いチューハイぐらいであとはこっそりとソフトドリンクを注文するような飲み方を繰り返していたため自分の限界を知らなかった。
泣上戸、ひたすらに面倒な人、説教をしだす人、同じ話を何回も繰り返す人、とにかく吐く人とといろんな人物を見てきたが私は『記憶飛ばし』の類に入るということに絶望した。
転んで頭でも打ったのだろうかやけに頭が痛い。二日酔いという経験が初めてなのかもしれない。
まだ、体内にはアルコールが残っているのだろう。まだ酔っているような感覚がある。
それでいて、きっと自分の目もおかしいのだ。

「どうしたの?そんな驚いた顔して」
私を包み込むような優しい声。この声は今までずっ聞いてきたのだからよく知っている。

「誰?」

「は?何いってんの?俺だよ。瀬戸口ですけど」



目の前の瀬戸口がすごくイケメンに見える。
これは抱かれたことによる錯覚なのだろうか。
もう一度目をこすり、冷静に考える。いつもの様子とは何かが違う。

「メガネ」
とつぶやくと、目の前で瀬戸口であろうという人物は、「あぁ、メガネかけてないとそんなに別人に見える?」
と言いながらメガネをかけた姿を見ていつも通りで私は安心した。

「うわ、びっくりした。瀬戸口かー知らない男の人と一晩過ごしたかと思った。いやーー28にもなってそれはないわーって自分でも思った。あーーよかったーー。」と独り言のように言いながら胸を撫で下ろした。

すると、瀬戸口は私を壁に押し寄せて
真っ直ぐに見つめる。その表情は今までに見たことのない「オス」の顔だった。
いわゆる壁ドンという状況で、今にも唇がふれそうな距離に、恋愛対象として一切見てこなかった瀬戸口が、『男』の瀬戸口がいる。

「昨日のこと、なかったことにされるんだ?」

私は、こんな表情の瀬戸口を知らない。
私の部署の女子たちが騒ぎ立てていることなど見た子も聞いたことがない。
でも、こんな顔を見たら全員が虜になってしまう。
いやいや明日からどんな顔して会社で顔を合わせればいいのだろうか。

「で、いつから付き合うことにする?
ちょうど昨日日付変わるタイミングだったし。」

「ちょっと待って。何にも覚えてないから。とりあえず落ち着きたい」


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