Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜

不倫(杉原颯太)

妻の不倫現場に遭遇して早1週間が経とうとしていた。
このことはまだ誰にも話していない。
このまま俺が目をつぶり再構築するのが一番良い方法なのかもしれないが、あの二人は愛し合っている。
状況が悪ければ悪いほど燃え上がってしまうかもしれない。
脅しも兼ねて、親権の話を振ってみたが俺に一人で子供を育てることはできるのだろうか。

今日は苦手としている上司と、一癖ある顧客の有賀様との接待だった。
70代の彼はジョークは一切通用せず、質問も細かい為、対応に苦労していた。
若い女性社員を毛嫌いしており色気も通用しない。
店に入ろうとすると、有賀様は俺たちに見せなかった笑顔を前方から現れた相手に向けた。

「今泉ちゃん。こんなところで会えるとは・・・」

「有賀様こんばんは」
透き通った声の主に目を向けると、THE今時の可愛くて綺麗なスタイルのいいお姉さんが現れた。

(なんだよ。結局お前も可愛い子が結局好きなんじゃん)
と思わず上司と目配せしてしまう。

「足の調子はいかがですか?」

「うん。だいぶ良くなったよ」
と、二人で会話を始めるが、俺たちの存在を察してうまく会話を中断させて颯爽と去っていった。

その後、今まで一度もYESを出さなかった男が二つ返事で契約をしてくれた。

「あの子に会えたから気分がいい」

と言って、他の大口契約もしてくれたのだ。
今泉という子は何者なのだろうかと問うと、彼女は有賀様の御宅のインテリアコーディネーターらしい。
容姿だけではなく気配りができ、仕事ができて大変気に入っており息子の嫁に迎え入れたいと言っていた。
もうお子さんは既婚者だが。それからというものの彼女の存在が気になってしまう。
嫁に欲しいというくらいなのだから結婚はまだしていないだろうが、彼氏はいるのだろう。
気がつけば、彼女の勤務先まで言ってしまった。

受付嬢に自然な理由で彼女との面会を頼み込み、笑顔で登場した彼女はやはり可愛らしかった。
俺のことをしっかり覚えていてくれていた。
前回の登場のおかげで、契約が取れたからお礼がしたいと彼女を誘い出した。

(下心は少しあるけれどこれは仕事の一部・・・)と念じながら・・・

「いや、私はたまたま居合わせただけです。お礼なんて・・・お断りします。」
と言われたからには、営業マンの血が騒いでしまう。

「じゃあ、個人的な理由で誘ってもいいかな・・・・」
あの日から、結婚指輪は外している。
心春は不倫したのだから俺だって少しぐらい独身気分を味わったって罰は当たらない。
胡散臭い誘い方をしたけれど彼女の頬が赤く染まったのには少し驚いた。
彼女くらいの可愛い子ならば男には苦労しないだろうから、あっさりとかわされると予想していたはずなのにその反応は期待してもいいのだろうか。
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