Bloody wolf



フードの下からは男の顔は確認できないけど、拳銃を持つ手が微かに震えてるのが分かる。

彼にとって、あれはきっと扱いなれない物なんだろうな。


かたや、ナイフを持つ男の方は安定のグリップ状態らしい。

狙い目は、拳銃を持つ男の方かなぁ。

あぁ、もう面倒だから、拳銃男とナイフ男って呼ぼう。



「よく見たら、夜叉の久路土(くろつち)峯岸(みねぎし)じゃねぇかよ。今さら何の用だ!」

晴成の聞いたこともない低い声が隣でした。

漏れ出てくる晴成の殺気は、本物だ。


周囲が息を飲んでこちらを見守っている。

恐怖に顔を歪めてても、彼らにとってこちらの事はは完全に他人事。

安全地帯で高みの見物ってところだろう。

2人の男の意識はこっちにしか、向いてないんだから。


「てめぇに夜叉を潰されて、俺の面目は丸潰れだ。ケツモチをしてた柳組からも報復を受けた上に、女を見せしめに奪われた」

ナイフを持った男が苛立たしげに言う。


ケツ持ち・・・ってなんだろう。

聞き覚えのないフレーズに首を傾げた。


「ヤクザが面倒見てるって事だ」

私の思考に気付いたらしい晴成が教えてくれた。


「ああ、なるほど。色々と大変なのね」

暴走族は子供の遊びでもないらしい。

大人が裏で絡んでるなんてねぇ。


「おい、緊張感ねぇな」

「あ、まぁ」

本当なら、この状況に恐怖して泣いたりするのかなぁ。

あいにく私はそう言うタイプじゃないけど。


「おい、赤谷、俺達をバカにしてんのか」

2人にヒソヒソ話してたら拳銃を持った男がヒートアップしてきた。


激情型なのかな。

顔、すっごいシワ寄せてるけど、人間て怒りでそこまで醜くなるんだね。


「どう思ってもらっても構わねぇよ」

多分、晴成の出してる殺気の方が凄いと思う。


「糞が! ここでお前は終わりなんだよ」

ナイフ男が叫ぶ。

「何がしてぇんだ? てめえら」

晴成は刺し殺す勢いで2人を順番に睨み付ける。


「てめぇの魂を取ってくれば柳組から、俺の女も峯岸の女も返してもらえるんだ」

ふ~ん、この人達の彼女がヤクザに捕まったのか。

まぁ、でも自業自得的な所、あるよねぇ、君達。


「柳のそんな戯れ言信じてんのか?」

薄ら笑いを浮かべた晴成は、凍り付くような瞳で2人を見据えた。


晴成の言うように、捕まった女の子達、そう簡単に解放されないと思うなぁ。
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