Bloody wolf
「とにかく、多分周囲は騒がしくなると思う」

「そうね。それでなくても響は目立ってるのにね」

「えっ? 目立ってたの」

おかしいな、静かに生活してたのに。

まぁ、及川君が絡んで来るようになってからは、嫌がおうにも目立ってた気もしないでもない。


「気づいてなかったの。まぁ響らしいけど」

やれやれと溜め息をつかれたが、知らないよ、そんなの。


「千里に迷惑掛かるようなら、私から離れてくれていいからね」

悪意が千里に飛び火するのは困る。


「何言ってんの。そんな事ぐらいで友達止めないよ」

「言うと思った」

フフフと笑う。

嬉しくもあり、戸惑いもあり。


「当たり前でしょ。ウルフが出てくる前から私達は友達なんだからね」

「ん」

「彼らのせいで、私達が友達じゃなくなるなんておかしいよ」

怒ってる千里は、ウルフに乗り込む勢いだと思う。


「ありがと」

だからね、凄く言いたくなった。


「ば、バカ。お礼なんていらないよ」

照れ臭そうにお弁当を慌てて食べる千里。

クラス委員で面倒見のいい千里は、ちょっと照れ屋さんだ。


「ウルフに入ったからって何かが大きく変わることなんてないし、これからもよろしく」

「もちろん。ところで、仲間って姫とかじゃないの?」

「私がそんな柄じゃないの知ってるよね」

ちやほやと持ち上げられて、守られるだけの存在なんてごめんだ。


「響は嫌がるよね、姫なんて」

「当たり前。仲間になるなら兵隊としてじゃないと嫌って言った」

「兵隊・・・って。本当に気を付けてよ。女の子なんだから顔に怪我なんてしたら大変」

千里は母親みたいだ。

うちの母親はこんなじゃなかったけど。


「大丈夫。そんな頻繁に溜まり場に行ったりしないし。晴成達だっていつも喧嘩してる訳じゃないよ」

「響の自信に満ちた大丈夫が心配」

千里はかなり心配性だよね。


「大丈夫大丈夫」

ポンポンと慰めるように肩を叩いたら、

「軽すぎる」

と再び大きな溜め息をくれた。


何かが起こる前から心配してもダメだしね。

なるようにしかならないんだよ、世の中って。


ほら、ケセラセラ~ってね。
< 121 / 142 >

この作品をシェア

pagetop