いつか、きっと。
小降りとはいっても、やっぱり濡れるのは嫌だから走って車に向かう。

それにしても雨が降ってきたというのに、友也も未来も私たちのこと気にならないのだろうか。

携帯の電源も切ったままで。

見えてきた友也の車。

リアガラスから二人の人影が見えるから、車に乗っているのは確実だ。

走り寄って運転席側に行こうとした私だったけど、それは出来なかった。

信じられない光景を目の当たりにして、私の身体が硬直してしまったから。

手に持っていたはずのコーラの缶が地面に落ちて転がっていく。

それでも私は一点を見つめたまま動けずにいる。

「おい生田、なんしよっとか!…………生田?」

落としたコーラを拾ってくれた瀬名くんが私に呼び掛けてくれてるけど、それに答えることもできない。

雨が急に酷くなり、バケツをひっくり返したようなどしゃ降りが私たちを容赦なく濡らしていく。

「生田、とりあえず来い!風邪引くやろ、ほらよかけん!!」

ずぶ濡れになった私は、瀬名くんの車に押し込まれた。

「瀬名くんごめん……。シート濡れてしもうたね。それに瀬名くんもびしょびしょやし…………」

「そいは別によかけど。そいよりもお前もびしょ濡れやっか!タオルは?俺の車に置いとったやつで良かったら。言うとくけど洗っとるやつやけん、せめて髪ぐらい拭けよ。……っていうか、さっきのアレは一体……」

瀬名くんのタオルをありがたく貸してもらうことにした。

髪は自分のハンドタオルで拭くことにして、シートが濡れないようにするためにタオルを敷いてその上に座る。

洋服も結構濡れてしまってるから、気休め程度にしかならないけど。

瀬名くんの言った『アレ』っていうのは、さっき目撃してしまったことを言っているのだろう。

友也の車に見えてた二つの人影が、一つに重なったあの光景。

忘れたいのに、思い出したくもないのに、目に焼き付いてしまったように消えてくれない。

「瀬名くん、このまま家まで送ってくれん?びしょびしょやし、瀬名くんも早う帰りたかやろうけどごめん……」

一刻も早くここを離れたかった。

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