いつか、きっと。
「友也の夢って……?」

「俺の夢?ひとつは、小学校の先生になること」

へぇ、そうなんだ知らなかったな。

でも友也勉強教えるの上手いし、向いてると思う。

「他にもまだあるの?」

「うん、ある。俺にとってはそっちの方が重要かとけど。まだ秘密」

ふうん……。

教えてくれないんだ。

高校生の間は彼女を作らないってことと、もうひとつの夢は何か関係があるのかも?

「本当は私、今日は友也に言おうと思ったことのあったとけど。今はやめておこうかな。私も女子校だし彼氏は作らないって友也に誓うよ」

『好き』って言葉で伝えるのはまだ早いみたいだから。

いつか伝えられる日が来るはず。

いつか、きっと。

『好き』の代わりに、ちょっと勇気を出して気持ちを表してみよう。

「ねえ友也にお願いのあっとけど、聞いてくれる?」

「明日美の頼みやったら、聞いてやるよ」

「それじゃ、思いきって言うよ。…………キスして、友也」


さっき私から友也に気持ちを伝えようとしたとき、友也は解っていて阻止したんじゃないかと思う。

友也は私の事を嫌いなわけじゃないんだよね。

お互いの気持ちを確かめ合わないのも、他の誰とも付き合わないっていうのも、なにか深い理由があるんだろう。

言葉にして確かめ合えないのなら、せめて心で示したかった。

私は友也の事が好きなんだって。

一回目は偶然の事故。

二回めは不可解な事件。

受け身ばかりじゃなく、自分からも想いをアピールしたい。

そして、友也の唇の感触をもう一度確かめたい。

いまは親友でいいから、誰よりも友也を近くに感じたいから……。

友也の手が私の肩に触れる。

しばらく言葉もなく見つめ合ったまま、視線を逸らせなくなった。

「あのさ……目ぇつぶってくれんば、しにっかとけど」

や、やだ私ったら。

ドキドキしすぎて喋れないから返事もできずに黙ったまま目を閉じた。

あ………………。

やっぱり友也だったんだね、あの時も。

忘れるわけがない、この唇の温もりや柔らかさ。

あっという間に離れてしまって、自由になった自分の唇が無意識に呟いた。

「……もっと」

いつの間にか雨は小降りになっていて、もう傘がなくても帰れるようになっていたけれど。

私たちはそっと優しく触れるだけの短いキスを、何度も何度も繰り返していたのだった。


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