幸せの足りないクリスマス アイムノットドリーミングオブアホワイトクリスマス
 何事かと驚いたが、今、この場を離れるわけにはいかない。
 もどかしさを覚えていると四季が彼の妹の秋穂とともに現れた。黒髪ショートの大きな目をした可愛らしい少女。身長は四季と変わらない。
 妹といっても学年は四季と一緒のはずだ。彼やしおりと同じ風見大学附属高校の制服を着ていた。ブレザーがぶかぶかでそこも可愛らしさを増している。スカートの舌に黒いニーソックスをはいていた。
 左手に大ぶりの紙袋。
 右手にはしき。しっかりと彼の左腕をつかんでいた。
「こんにちは」
 と秋穂。
「あ、うん。こんにちは」
「ちょっと四季を着替えさせたいんですけど」
「みなとさん、そんな必要ないって言ってやってください」
 かなり切迫した口調で四季が言う。
「こいつサンタ服なんて用意してきてるんですよ!」
「だってトナカイがいるのにサンタがいないなんておかしいじゃない」
「おかしいのはお前の頭だ! どこで着ぐるみのこと聞きつけた!」
「四季のことはぜーんぶわかるのよ。あたしの愛の力をなめないで」
「黙れ変態! サンタ服なんて絶対嫌だからな!」
「そんなこと言って、内心着たいくせに」
 四季が逃れようともがくものの、なかなか無理な様子だ。
 みなとは考える。
 言われてみればクリスマスにトナカイだけでは物足りない。
「……着替えなら向こうでやってね」
 家のほうを指さした。
「四季くん、よろしくね」
「そんなぁ……」
「ありがとうございまーすっ! ほら、諦めなさい」
 秋穂が四季を引っ張って厨房を後にする。
 みなとさーん、と四季の助けを求める声が遠ざかっていった。
 
 
 
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