課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「は、羽村さん、なに沈黙してるんですかっ」
黙っていると、今度は小声で真湖がそう言ってきた。
海も何故か自分を見つめている。
いや、まだ目が見えているかも怪しいのだが、そんな風に見える。
顔がこちらを向いているのだが、その顔つきが、赤ちゃんながらに五嶋課長にそっくりで。
こいつまで、母親に近寄る虫をなんとか片付けようとしてるんじゃないだろうな、と思い、つい、海の顔を見つめ返していると、電話の向こうで男が怒り出した。
『なんとか言えっ。
はっきりしない奴だな。
お前のような奴に、雪乃は渡さんっ。
お前の写真は見たぞ。
どうせ、女がいっぱい居るんだろう。
いや、居るはずだ』
なにかの例文かという口調で男は言ってくる。