課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 


「真湖りん、かばうつもりで、僕を虫ケラみたいに言うの、やめてくんない……?」
と言ったあと、羽村が自分のスマホを見るのを真湖は見た。

 音が消してあったようだ。

「すみません、ちょっと」
と言って立ち上がる。

「あれ、雪乃さんですよね、きっと」
と真湖が笑うと、雅喜は、もしもし、と言いながら、リビングから廊下に出かけた羽村の背中に向かい、

「雪乃さんなら来てもらえ」
と言っていた。

 羽村は、ちらとこちらを見たが、なにも言わずに、そのまま廊下に出て行く。

 鍋用の取り皿をテーブルに運びながら、雅喜は、
「上手くいっているようでよかったじゃないか」
と言ったあとで、

「でもまあ、基本、悪い奴だしなー。
 また三上に取られて終わりじゃないのか?」
と言っていた。

 ええー? と真湖は笑う。
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