夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
ある日

珍しく国王がミレイア達と昼食を共にした。
いつもは政務に忙しく共にすることは希だった。

アルトバル国王、サリア王妃、セイラスとリノン、トニアスとミレイアの6人全員で食卓を囲む。
いつにも増して上機嫌のアルトバル国王。

「こうやって皆で昼食を共にするのは久しぶりだな?」

「そうですね、アルトバルはいつも忙しそうだから今まで寂しい昼食でしたわ」

アルトバル国王に水を差すようにサリア王妃がお小言を言うと苦笑いの国王は王妃の睨みを避けるようにミレイアに話を向けた。

「ミレイア、最近は随分と頬もふっくらとして顔色も良さそうだな?」

「ええ、ラミンにちゃんと食べて体力付けなさいと口酸っぱく言われてますから」

にこりと笑うミレイアに今度は渋い顔になる国王はリノンに話を振る。
ラミンの話が出てくるといつもこうだ。

「リノン、ノアローズの暮らしは慣れたか?今朝はセイラスと城下の視察に赴いたそうだな?」

「はい、どこも活気に満ち溢れてて興味深く見て回れましたわ。途中、新橋の建設現場でラミン様と会って橋の作りについて分かりやすく教えて頂きました」

「む…そうか、それは良かった。ところでトニアス………」

またもやラミンの話になり益々渋い顔になった国王はトニアスに話を向け、ミレイアとリノンは目を合わせこっそりと笑った。
そんな二人を見逃さなかったセイラスは微笑ましい義理姉妹に口元を上げ小さくため息をついた。

「おお、そうだ、ミレイアの体調も戻って来たことだし、そろそろミレイアのお披露目の舞踏会を開こうと思う」

「えっ⁉」

突然の国王の発言に皆が驚く。

「今やミレイアは世界の救世主だ。誰も咎める者はいない。家臣どもからミレイアのお披露目はいつなんだとせっつかれていてな」

「でも、私、人前に出るのは…」

急に顔を曇らせるミレイアは、公の場に出たのはセイラスの結婚式と舞踏会のみ。
それも直ぐに退出してあまり周りの貴族達と関わってはいなかった。
それがミレイア主役の舞踏会とあっては直ぐに退出も出来ないだろう。
注目を浴びることに慣れていないミレイアにとっては不安しかない。

「なに、心配はいらない。私の隣にいれば良いのだ。因みにこの舞踏会では年頃の独身者を多く招待する。ついでにミレイアとトニアスの伴侶となるべき人間を選定する意味合いもある」

「ついでって…」

ついで呼ばわりされたトニアスは苦笑い。
いつまでも縁談を断り続けるものだから苦肉の策なんだろう。

ミレイアは驚愕の為に言葉も出なかった。

「何を言ってるのです?アルトバル」

これにはサリア王妃も驚愕し国王を凝視する。

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