夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
「娘を返してもらおうか、グラージャ」

声がしてはっと前を向いたと同時に辺りにかがり火のような光がいくつも灯りミレイアは目を見張った。

『クリスリード…』

忌々しそうに唸るグラージャと予想していたのだろう平然としているガゼント。

勿論剣を抜き仁王立ちしているのはクリスリードではなく瞳の色は違うが髪色も顔も似ているアルトバル国王。

「お父様…ラミン…皆」

そして、両脇にはラミンとモリスデン。
後ろにはセイラスとトニアス、エルストン、キースにルシアンがいた。

ブギゃ

久々登場のクルタもエルストンの腕の中にいる。
鋭い視線を投げ掛けているラミンが無事のようで安堵したミレイア。
頼もしい面々が来たことを密かに喜んだ。

『…ふん、クリスリードの子孫ども、小娘をそう簡単に返すと想うか?ヴァルミラはどうした?その息子の髪は?』

「ヴァルミラ様は来ない。力づくでもミレイアは返してもらう」

「ガゼント様…あなたはやはりそちら側の見方なのですか…?」

悲痛な表情のモリスデンはガゼントを見つめるがガゼントは目を会わせることもなく無表情のまま前を見据えていた。

『ヴァルミラを連れてこないとはいい度胸をしている。この小娘がどうなってもいいのか?」

「いいわけが無いだろう!」

叫び突進してきたアルトバル国王と付いてきたトニアスを無表情で見ていたガゼントが片手を二人にかざす。


「うあっ…!」

二人は見えない壁に阻まれるように弾き返された。

「バカもん。ガゼント様相手にただ突進しても無駄じゃ」

地面に打ち付けられる前にモリスデンが魔法で二人を守り衝撃は免れたアルトバルとトニアスは体制を立て直す。

「くそ、魔法使い相手というのはやりにくいな」

頬にかすり傷を負ったトニアスの呟きに皆固唾を飲むしかない。

「お前が欲しいのはこれだろうグラージャ」

静かに言葉を発し手に持っていた小箱を掲げるラミンに皆目を見張る。

「ラミン!それは最後の切り札じゃろう!今出してどうするのじゃ!」

モリスデンが慌てて駆け寄り取り上げようとするがそれをかわすラミンがギロリと睨む。

「悠長なこと言ってられんだろう。小娘を見ろ。頬は腫れ首にも絞められた跡がある。早く助けないと何されるかわかったもんじゃねえ…」

「何と…!」

炎で照らされたミレイアをよく見れば確かに頬も首も赤くなってる。
それは一見炎の陰影でわかりずらい。
誰も気付かなかったのにラミンだけはミレイアの異変に気が付いていた。

「私の娘に手を上げたのか…!」

アルトバル国王も気が付かなかった後悔とレイアの痛々しい姿に怒りを覚えまた剣を構えたがセイラスに止められた。
むやみに突っ込んでも先ほどの二の前ですと言っているセイラスもまた黒いオーラが立ち込めるような憤りを隠すことなくミレイアを抑えているガゼントを睨んだ。



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