夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
そう言って振り向いたときにミレイアはやっとラミンの存在に気が付いた。

「ラミン!」

腕を組みイライラした様子だったラミンは、屈託なく破顔したミレイアに目を細めミレイアが差し出した手を握った。
いつものように温かい手にミレイアは安心する。
この手が自分一人のものになるのだと思うと嬉しくなった。

「もう話は終わったか?」

嬉しそうに笑うミレイアにラミンも和んだが国王はすかさず邪魔に入る。

「ああ、そうだミレイア。今日はこの父と一緒に寝よう。もちろん母上も一緒だよ?」

「本当?お父様とお母様と一緒に寝れるの?小さな頃に戻ったみたい!嬉しい!」

国王に抱き付くミレイアにさっきまで繋いでた手が空を掴み呆然とするラミン。
国王はそんなラミンにニヤリと笑う。

「それとラミン。ミレイアとの婚約を認めはしたが結婚はまださせないよ?」

「はあ!?」

さっきと言ってることが違うじゃないか!と驚くラミンにミレイアも不安な顔をする。

「結婚はミレイアが18になるまでお預けだ。ミレイア、18になるまで後数ヶ月。私の娘として傍に居ておくれ」

ミレイアに向けた優しい眼差しにミレイアは直ぐにはいと頷いた。
寝耳に水のラミンは渋い顔をしたが…

「ラミン…後数ヶ月だからいいよね?」

ミレイアの潤む瞳で見つめられると誰も勝てやしない。

「…分かったよ、仕方ない。どうせ準備もあるしな。まったく、陛下の我が儘にも困ったものだ。ミレイアが18になるまでに子離れしてくださいよ」

「む…ラミン、そんなこと言ってもいいのかな?」

年甲斐もなくむくれる国王を訝しげに見るラミンは嫌な気しかしない。

「…それはどういう意味ですか?」

「お前達の結婚は私の采配にかかっていると言うことだよ」

「く…この期に及んで…」

勝ったとばかりにフフンと意地の悪い笑みを浮かべる国王にラミンは言い返す事を諦めた。
ここ数週間何度も国王の元に赴きミレイアとの結婚許諾を訴えた。
それが魔法のせいで認められなかったとは言えやっと許された結婚。
また国王がへそを曲げて撤回されては元も子もない。

「ラミン、結局父上にしてやられてるよね?」

ニヤリと笑いミレイアを抱いたまま先立って歩く国王。
その後ろに付いて行きながら悔しそうに拗ねているラミンにトニアスはクスクス笑った。

ラミンとミレイアの結婚が決まってトニアスの心の中で何かが吹っ切れた気がした。
なんだかとても清々しい気持ちだった。

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