夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
「まあ、ヴァルミラにとっては私は会いたくない相手だろうからな。あのヴァルミラが弟子を取ったとは聞いていた」
「会いたくない?」
「ああ、言い忘れていたな。私はグラージャの側近だった。昔、ヴァルミラ達とは敵同士というわけだ」
「何!?」
ガゼントの言葉に皆息を飲みラミンは剣を握りいきり立つ。
「お前は…敵なのか?」
仲間になるふりをして敵陣に乗り込んだということなのかと、低い声で威嚇するラミン。
慌てることもなくガゼントは睨むラミンと目を合わせふっと笑った。
「ふ…そういきり立つな。昔の話だ。グラージャが倒され私も死を覚悟したが…クリスリードに助けられた。私はこの世界も人間も好きだ。今またグラージャが復活し世界を壊すというのなら私はグラージャを倒すまで」
「主従関係は?」
「そんなもの2000年も経てばとうに消えている」
「…信じて…いいんだな?あんたが俺達の見方だと…」
「信じる信じないはお前らの勝手だ」
警戒するラミンに肩をすくめ笑って見せたガゼント。
ラミンはキッとエルストンを見る。
「…信じてみよう兄上。僕の勘だけどこの方は嘘は言っていない…と思う。」
「おい!はっきりしないな?お前過去が見えんだろ?」
イライラとしたラミンがつい声をあらげる。
「兄上…見えると言っても全てではないよ。血が薄まった分能力も薄いんだ。人や物の記憶の断片しか見えないよ」
困ったように説明するエルストンを擁護するようにキースも声を上げる。
「そうですよ。私も未来が見えるとは言え全てではない。夢見でキーワードとなるものだけだ。能力は万能ではないのだよ?」
「…ちっ、…悪かったよ…」
「ふん、青二才が」
殊勝に謝ったラミンがモリスデンのヤジにギュンと睨む。
そんなラミンをモリスデンは無視しガゼントに歩み寄った。
「わしもガゼント様を信じてみたいと思う。この世界の復興を陰ながら手助けしてくれてるのは知っておりますぞ!」
「おや?ばれていたのか?こっそりやってたつもりだったが」
「魔法を使える者はそうはいない。あなたが協力してくれるのは有難い限りじゃ」
モリスデンはガゼントの手を取り固い握手を交わす。
なんですと!それは有難い!とキースとシエラ国王まで加わる。
和気あいあいとしてるところをキリキリと睨んでいるラミンにエルストンが心配そうに近づいた。
「兄上」