夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
そういえば家族に言えないこともラミンの前では何でも言えた。
どんな我が儘も可愛いもんだと笑って許してくれたラミン。
今同じ事をしてもきっと睨まれて終わりなんだろうけど…。

「私を知ってもらうには時には我が儘も必要…かしら…?」

「そうよ!きっとそう!ミレイアの我が儘は誰もが聞いてあげたくなっちゃうわ!」

ね!と嬉しそうに笑いながらリノンはミレイアの腕を引っ張り歩き出した。
ミレイアはなんだか嬉しくて一緒に歩き出す。

コンコンコン

ドアの前、どうぞと声がしてミレイアはドアを開ける。

「やあミレイアどうしたんだい?」

机の前に座り書き物をしていたセイラスは可愛い妹が訪ねてきて顔を綻ばした。
ドアを開け入ってこないミレイアを不思議に思い立ち上がったセイラスは滅多にこの部屋に来ない愛しい人が後ろにいることに気が付いた。

「リノン?どうしたんだい?珍しいね?」

「あの…セイラス、お仕事中にごめんなさい」

「全然いいんだよ、会いに来てくれたのかい?嬉しいよ」

おずおずと入って来たリノンの肩を抱き寄せこめかみにキスをすると遠慮がちに微笑むリノンに仕事疲れも吹っ飛ぶ。

「本当に?」

「ああもちろんさ。僕もリノンに会いたいと思ってたところだよ?」

朝別れたばかりなのにそんなことを言うセイラスに、嬉しそうに微笑むリノンを見つめてるとミレイアがゆっくりと扉を閉めて出ていこうとする。

ミレイアが連れてきてくれたんだね?

セイラスはミレイアと目が合い微笑み合うとミレイアはそのまま静かに出ていった。

「セイラス、あの、あのね…」

「ん?」

リノンを見れば顔を真っ赤にして言い淀んでいるから不思議そうに首をかしげた。


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