夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
「王女さんいるかい!?」

「はい!」

慌てたようなルシアンの声に咄嗟に返事をすると乱暴にドアが開けられ顔だけがひょっこりと現れた。

「王女さんすまねえ、ラミンの奴が…」

「…ラミン!」

弾かれたように走り出したミレイア。

ラミンはどこに行っていたのかしばらく政務室に戻らず帰って来たと思ったら手に怪我をしていて応急措置だけしてまた仕事に取り掛かった。
青い顔で辛そうな顔をしてるのを心配した部下が医務室に行くように説得しているところに遭遇したルシアンが政務室に入ると立ち上がったラミンは頭を押さえ倒れてしまい、慌ててミレイアを呼びに来たのだった。

荒い息を整えるように胸を押さえ政務室に入ったミレイアはいつもように長椅子に横たわるラミンに息を飲んだ。

側に寄れば青ざめ眉根を寄せて眠ってるよう。
右手には包帯が巻かれているが血が滲んでいた。

「ラミン…どうして…」

直ぐに自分を呼んでくれないんだろう。
憎い相手で呼びたくないのはわかるけどこんなに我慢して手に怪我をして何をしていたというのか?
あの時、女性達に囲まれてる所に遭遇しても何も感じてない表情で自分を見ていたラミン。

ミレイアは悲しみが占める胸を押え一度深呼吸すると、溢れる前に涙を拭きラミンの横に膝を付いた。
ラミンの額に手を当て力を注ぎ、右手の包帯を取って状態を見た。

「酷い…」

関節は潰れ大きく裂けた傷が痛々しい。
用意してもらった布で血を丁寧に拭き取り手を当て心を込めるように癒しの力を使った。
気を使ったのかいつの間にかルシアンも部下もいなくなり外は薄暗くなっていた。

眠ってるラミンの顔を見つめ乱れた白銀の髪を撫でる。
ミレイアが眠り続けた時に願掛けで伸ばした髪は肩下まで伸びていて、ミレイアが目覚めたからそろそろ切ろうかと言っていたラミン。
そんな事も忘れ伸ばされたままひとつに纏められた白銀の髪はいつの間にか出ていた月に照らされ輝いていた。
それをひと房手に取りキスをする。

「ラミン…愛してる」

ラミンの手に頬を寄せ切なく胸が疼くのを感じながら目を閉じた。


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