不機嫌な彼と恋のマジックドライビング
「片瀬さん、相談したいことがあるんですけど…」

勢いで出勤してきた片瀬さんを捕まえたものの

「ん?何、どうした?何かトラブった?」

「あっ…いや…その…」

明らかに仕事の話だと思っている片瀬さんを朝から捕まえたことをすぐに後悔した。

しどろもどろな俺に、勘のいい片瀬さんはすぐに気がつき、ニヤニヤしながら俺を見つめた。

「あー、なんか言いたいことわかったかな。」

もちろん、片瀬さんに俺が蓮見さんを好きだなんて言ったことはない。

フロントに上がってから仕事でやり取りをするようになった片瀬さんは、彼女を "蓮見ちゃん" と呼び仲良くしている。

毎日俺はそんな二人を横目で見ながら密かに嫉妬して、片瀬さんにはこの気持ちは絶対に知られたくないと思っていた。


< 118 / 133 >

この作品をシェア

pagetop