あたしを知らないキミへ
アンタは外に出た瞬間、寒そうに背中を少し丸めて、制服のズボンに手を突っ込んだ。

少しの間、あたしはアンタを眺めていたけど、すぐに前を向き直して歩き出した。
何もなかったかのように・・。
平然としていて、冷静で・・。

たとえそこに、色んな気持ちが入り交ざっていたとしても、あたしはもう後ろを振り返らなかった。

それからあたしは、本を買ってから家に帰った。

外は寒くて早く家に帰りたいはずなのに、あたしはいつも歩くスピードよりも少しだけペースを緩めて、帰路を歩いた。
もちろん、帰り道だから交差点も通った。

そこで何を思ったのかは、ここではあたしの秘密にしておくよ。
冷たいけど、どこか優しく吹いてくる風に、あたしは少しだけ癒された。
そんな風に、あたしは立ち止まって大きく息を吸い込んだ。

冬の匂いがして、あたしは空を見上げた。

少し、藍色掛かった空に

優しく微笑んだ。
< 321 / 388 >

この作品をシェア

pagetop