幼な妻だって一生懸命なんです!




「美波ちゃん?美波ちゃん、大丈夫?」

誰かが私の名前を呼んでいる。
そっとまぶたを開け、ぼんやり見えるのは心配そうに覗き込む菜々子さんの顔。


「ここは?」

白い天井が見える。


「医務室。仕事中に倒れたのよ」

ホッとしたようにため息をつく。


「すみません、あ、お店は?」


「うん、バイト二人いるし、店長ともう一人ヘルプで社員がいるから大丈夫。美波ちゃんの様子を見て来てって言われたの」


「今、何時ですか?」

私が体を起こしながら時計を探す。
時計は午後五時になろうとしていた。


「あ、忙しい時間じゃないですか…戻りましょ」



「何言ってんの、長瀬に連絡したから、来たら一緒に帰りなさい。外出先から飛んで来るから」



「でも…」



「でもじゃない!」

菜々子さんが恐ろしく怖い顔をしている。


「はぁ…美波ちゃん、あの子に何言われたの?」



「えっ?」



「由香が来てたんでしょ?店長が女性を接客した後に倒れたって。少し様子がおかしかったことに気が付いていたわよ。その客がカードで支払いしていたから誰だかすぐにわかった。由香に何言われたの?」


「菜々子さんもご存知だったんですね。由香さんと要さんが恋人同士だったこと」

私の言葉を聞いても驚かない菜々子さん。
やっぱり公認の仲だったんだ。


「…そうね」

菜々子さんがさっき私を問いただすようなトーンから変わって静かに答えた。
そして考え込むように


「なんで今更、そんなことを言い出したのかしら、あの子」


「わかりません。ただ…」


「ただ?」


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