クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました

 そうやって嫉妬してもらえるなんて、あきれるどころかものすごくうれしいのに。

 でも、今はよろこんでいる場合じゃない。

「だって、権力争いとか常務が反旗を翻したとか、ものすごく不穏な話を聞いて心配していたのに、そんなくだらない理由だったなんて!」

 真剣に悩んでいたのが、馬鹿みたいだ。
 思わず私が嘆くと、部長は眉をひそめた。

「なんだ、その権力争いって」

「新谷さんが言っていたんです。社長派と常務派に分かれて対立していて内部分裂寸前だって」

「あいつはまた、てきとうな話を……」

 部長は額に手を当てため息をつく。

「だから、部長は権力争いを有利に進めるために、好きでもない私と結婚するんじゃないかって思って不安になって」

 私がそう言うと、部長がこちらを見つめる。
 その視線は、少し怒っていた。
            
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