クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「それよりも前に、偶然恵介さんがペットショップで子犬を抱いているのを見かけたんです」
もう十年以上前だけど、私は今でもしっかりと覚えている。
「背が高くてかっこよくて完璧そうな男の人が、大きな手でおそるおそる子犬を抱いていて、なんだか不器用ででも優しそうな人だなって印象に残っていたんです」
そう言うと、恵介さんの表情がかわった。
端正な顔に戸惑いと羞恥が浮かぶ。
「しかも子犬を抱いたとたん、その犬がおびえて逃げ出そうと暴れ出して。すごくしょんぼりした表情の恵介さんを見て、あ、私この人が好きだなって直観で思ったんです」
「あの場面を、見られていたのか……」
「それからしばらくして兄が家に恵介さんをつれてきたときは、また会えたってすごくすごくうれしかったんですよ」
「遙にそんな情けないところを見られていたなんて、知らなかった」
恵介さんは動揺を隠すように口元を腕でおおいながらそうつぶやく。
そしてこちらにさぐるような視線を向けた。
「じゃあ、遙は情けない俺を知っても幻滅しない?」
「幻滅するどころか、素の恵介さんを知るたびにどんどん好きになって困ってます」