@YUMI KO
しかし、現実はそんなに甘くなかった。


お金がないと焦りが生じる。


焦りが生まれることで互いにキツク当たる事が多くなっていた。


そんな、夏の日だった。


冷房器具を買うお金がない2人は近くの川原で涼むのが日課になっていた。


アパートの窓からでもよく見える川では涼を楽しむだけでなく、魚釣りにも最適だった。


「ちょっと、涼んでくるね」


休日だった友則にそう一声かけて、由美子は1人で川へ向かった。


川の流れはいつでもおだやかで、少し足をつけるくらいなんでもないことだった。


「行っておいで」


どうにかお金を手にしようと必死で勉強していた友則は、経済書から視線を上げずにそう返事をした。


俺が由美子を連れ出したのだ。


もちろん由美子も同意の上だったが、自分がしっかりしないといけない。


これ以上苦労をかけてはいけない。


そんな気持ちが強かった。
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