@YUMI KO
「エマ。そろそろ帰ろうか」


川から出て素足のままエマに近づく。


しかし、エマはジッと1つの方向を見つめていて反応を示さない。


「エマ? どうしたの?」


エマの横に立ち、屈み込んでエマと同じ目線になって確認してみる。


その先にあるのは廃墟だった。


昔は2階建てのアパートだったみたいだけれど、その外壁はあちこちがひび割れ、窓ガラスも割られたままになっている。


スプレーでわけのわからない落書きをされているし、悪ガキたちがよく集まる場所なのかもしれない。


「あそこにはもう人は暮らしていないんだよ? 見て? こっち側の壁は崩れちゃってる」


あたしは廃墟を指さしてエマに言った。


相当古い建物なのだろう。


壁の一部は崩れ落ちて中の様子が丸見えになっている。
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