極上旦那様ととろ甘契約結婚
「神様に信用されてるならきっと頑張れる。お母さんを心配させないで生きていけるわ」

そう言って頭を下げた少女はくるりと背を向けて建物の中へ歩き出す。

「ちゃんと自分に優しくするんだよ」

その小さな背中が大きすぎる覚悟で強張っているようで、思わず大きな声で呼びかけた。

「神様だってご褒美は計画のうちなんだ。厳しくし過ぎたら、君がいつかぺちゃんこに潰れちゃう。だから、たまには息抜きが必要だって覚えておいて」

張り詰め過ぎた心はいつかぱりんと割れてしまう。

そう心配している僕の気持ちが通じたのか、立ち止まった少女は少しだけ振り返り、小さく頷いた。そして建物へと駆け出していった。

あっと言う間に見えなくなった背中に、それでも俺は声をかける。届きはしない、小さな声で。

「信じていて」

自分を、人生を、世界を。そして、出来るならば、僕を。
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