極上旦那様ととろ甘契約結婚
マズいと思って咄嗟に出た謝罪はしかし、穏やかな声に遮られた。

「ただ、やっぱり成美が辞めた経緯は正しいものじゃなかったと改めて思ったんだ。YOSHIKAWAは会社規模として大企業に分類されるし、社会的にネームバリューもある企業だ。そんな会社でこんな人事、法律的に許されても道義的に許されるものじゃない」

「……はい」

真摯に仕事に取り組み、コネや運じゃなくその努力と成果を評価されている人だ。社会が綺麗事だけじゃないと分かっていても憤っている。しかもきっと私の為に。

そう思うと胸の中がじんわりと暖かくなってくる。こうやって自分の為に誰かが真剣に怒ってくれるなんて、久しぶりの事だ。

「あの…ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。きっと神様は私がこの状況を乗り越えられると思ったんだと思いますし。何より、実際に今、ここで幸せですし」

嬉しくってふわふわとした頭だったからまた失言してしまったと気付いたのは数秒後。すっと視線を横に逸らした修吾さんの耳がみるみる赤く染まったのを見た後だ。

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