極上旦那様ととろ甘契約結婚
その声に誘われるように顔を上げると、苦しげに眉を寄せた修吾さんの顔が間近にあった。

「だから、噛み締めるなって言ったろ」

そのまま強い力で抱き寄せられる。さっきまで修吾さんに申し訳なくて、修吾さんから離れる事を考えていたはずなのに、急な展開に拒む事も忘れた私は、閉じ込められた暖かな拘束の中でギュッと彼の胸に縋り付いた。

私からの行動に、抱き締める腕が強くなる。

「大切なんだ。成美本人にも傷付ける事を許せないくらい」

切なさの滲む声に顔を上げると、真っ直ぐな視線に絡め取られた。
眼鏡がないせいか、いつもより強い想いが伝わってくる。

「……修吾さん」

その瞳に魅入られて吐息のような声が出た。それは自分で聞いてもどこか艶かしさの滲んだ声で。

「成美」

そっとまつげを伏せた修吾さんの顔が近づいた時。

「成美さーん、お医者さんがいらしたから入るわね。そろそろ点滴が終わ……」

ハキハキとした声が聞こえたと同時にからりと開いた障子の向こうにあゆみさんと白衣を着た中年男性の姿が見えた。
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