【短編】クリギリ・ナイト
そんな俺でも、中学2年の時に好きな子がいた。


俺には手の届かない存在だった。


俺はその子をただ、じっと影から見ることしかできなかったんだ。


なぜなら、その子の視線の先には、司がいたからだ。


常に成績はトップ。
俺の好みのメガネ、おかっぱ頭にきれいに揃えられた前髪。
制服はきりりと着こなし、ど近眼のメガネの奥に隠れた綺麗な瞳。


姿勢はまっすぐで、石鹸の匂いがして、清潔な彼女。


でもその瞳は俺の後ろにいた、司をみつめていた。


殴られそうで、告白なんかできなかった。


だいたい、ああいう子は俺みたいなタイプが大嫌いなはずだから。


話をしたのは2回だけ。


緊張して、胸がどくんと高鳴った。



同じクラスで、遅刻ばっかする俺に、『ちょっと、勉強したくないなら、学校にこなければいいのに。』


そんなひどいことを言われても、俺の胸は


ああ、ドキン、ドキン…


俺はただ『ああ。』

と答えるのが精一杯だった。


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