夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
短編:酔った結果
 広い家には今、私しかいなかった。
 すっかりこの広さに慣れたつもりだったけれど、こうしてひとりになると改めて思い知らされた気持ちになる。

 今夜、春臣さんは進さんとふたりで仕事の話をすると言っていた。
 ついでに夕食も食べてくるということで、遅くなるから先に寝ていても構わないとも言われている。

 それならばもう眠ってしまおうかと寝室へ続く廊下に目を向ける。
 でも、結局リビングのソファに腰を下ろした。座る前にあのマグカップで紅茶でも淹れればよかったと思いながら。

 ひとりで眠るのだって、別に今まで通りのはずだった。むしろふたりで眠るようになった今の方が私にとっては違和感が強いはずなのに、どうしてかそちらの方が安心してしまう。春臣さんのぬくもりが存外心地よいせいだろう。

 恋人期間さえなかった、夫婦。

 私たちはたしかに愛し合っていると思うけれど、ときどき不安になることもある。
 春臣さんは私を好きだと言ってくれる。私が作った料理も、私と過ごす時間も。でも、それは私が思っているのと同じ“好き”なのか、たまにわからない。
 愛の深さで優劣をはかるつもりはない。ただ、同じだけの想いを抱いてほしいと思う。

 ひとつ、溜息を吐いた。
 夜中ではあるけれど、テレビでも見ようかとリモコンに手を伸ばす。
 それとほぼ同じタイミングでチャイムが鳴った。
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