夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
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「いくつか候補は出しておいたが、最終的にはお前の好きなようにすればいい」

 休日、珍しく出かけていた春臣さんが遅くに帰って来たかと思うと、突然大量の雑誌をテーブルに置き始めた。
 夕飯の支度をして待っていた私にはなんのことかまったくわからず、困惑しながら雑誌の山から一冊手に取る。
 そして、固まった。

「……情報誌、ですよね。結婚についての」
「結婚式場についての情報誌だ」
「ええと、うん。まあ、そうなんですが」
「もう一度式をするんだろう? 準備は早い方がいいと思ったんだが」

(覚えてたんだ)

 以前、私は春臣さんに結婚式の話をした。
 契約結婚だったときは神前式だったから、今度は教会で。そして春臣さんのタキシード姿を見たい、と。
 春臣さんは私のウエディングドレスを見たいと言ってくれたけれど、おそらく私は自分のドレスを選ぶより春臣さんのタキシードを選ぶ方に時間がかかるだろう。
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