夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
・オフィスでも溺愛ですか?
 朝のことはすっかり頭から追い出し、仕事は仕事としてこなす。
 まさかあのクロスタイル本社、しかも社長室で働くことになるとは思っていなかったけれど、どうやら私は事務作業より秘書業の方が向いているらしかった。

「午前中は十時に会議があります。十一時半に来客が。十三時まで時間を取っていますが、先日あった話の続きとのことなので、おそらくそこまでかからないと思います。その後、昼食を終えたら……十四時から取材ですね」

 パソコンと向き合う春臣さんに伝える。
 ここに来れば夫と妻から、社長とその秘書になった。
 こういうやり取りをしている方がずっと落ち着く。
 それなりの関係を築いているとはいえ、やっぱり契約結婚の夫婦というのは歪なものなのだろう。

「取材の担当は海理だ。向こうに聞け」
「分かりました。ついでに総務へ資料を届けてきます。新規事業のデザインはあれで確定させて大丈夫ですか?」
「ああ。――総務?」
「はい。デザイナーに送付する書類とまとめた方が二度手間にならないかと思いまして」
「なるほど。任せる」

 これまで春臣さんに秘書は付いていなかった。
 そのために前任からの引継ぎもなく、今は逐一確認して頭に叩き込む作業の方が多い。
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