夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「この二人は結託して俺を結婚させようとしていた。だから援助の条件が結婚だったんだろう。……大体、妙だと思っていたんだ。海理が俺の許可も確認も取らずに勝手に事業の話を進めるはずがない。もし俺が結婚せずにいたらどうするつもりだったんだ?」
「その時は俺が婚活パーティーに引きずり出す予定だったよ。俺が適当な女性を連れてくるから、一番よさそうな子を選びなーって」
「……お前な」
「そうならなくてよかったよ。奈子さんと上手く落ち着いたみたいだし」
「そういう問題じゃない」
「でもなぁ、春臣。お前、結婚を条件にしなかったら奈子さんとも結婚できなかっただろ。その点は祖父ちゃんたちに感謝してもいいんじゃあねえか?」

 時治さんがにやりと笑った。
 悪事と呼んでいいのかどうかはともかく、それが白日の下に晒されてなお強気でいられるなんてただ者ではない。さすが日本の経済を支配していると言われるだけのことはある。

「まあ、強引な手段になったことは謝るよ。悪かったな。海理くんのことはそんなに叱らないでやってくれ」
「……もういい」

 春臣さんが溜息を吐く。
 机の下でそっと私の手を握ってきた。

「祖父さんの言う通りだ。結婚の話がなければ、奈子と一緒になれなかった」
「式はまた挙げるのかい? 前は小ぢんまりやってただろ」
「……奈子はどうしたい?」

 話を振られて少し考える。

「結婚式はウェディングドレスを着るんだと思っていたんです。だから……写真だけでもいいので、いつか春臣さんのタキシード姿を見せてください」
「ウェディングドレスを着せてくれ、じゃないのか、そこは」
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