ツンデレ娘とヘタレ男は気付かない
猛視点





ついに来た県大会




ここまでの練習の成果を発揮する場面だ






………………中学と同じようにはしないために諦めず、続けてきたんだ




ここで俺のすべてを出し切るんだ








一回戦の相手は県内でも屈指の実力校だ



だが、ここで怖じ気づいてしまったら勝負する前から負けたようなもんだ




俺はキャプテンとしてこのチームを引っ張っていくんだ





試合が始まった





相手は想像していた以上の強敵だった



速いパス回し、あたり負けしないフィジカル、完璧な連携


すべて俺らの上をいっていた




序盤からかなりの点差をつけられ、みんなの顔が暗い



ここはキャプテンとしてみんな士気を高めないと…



「まだまだ!ここから巻き返すぞ!!!!」




「無理だろ」



なに?




「ここから逆転できるなんて正気か?点差を見てみろよ、もう中盤戦なのに30点以上もはなされている」



「もう俺らはバテバテだよ」


「頑張るならお前一人で頑張ってくれ」


なんだよそれは


今までの努力は一体なんだったんだよ




後半戦に入っても状況は悪くなる一方だった




俺も正直、体が追いついていかない






声援もほとんどなくなり、相手チームは2年生まで出してきた






このまま諦めてしまおうか




もう疲れたしな、やっぱり俺にはキャプテンなんて荷が重すぎたんだ





















「諦めて、終わらせるなーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」





突然後ろから大声が響いた



振り返ると、肩で息をしながら顔を真っ赤にしている蒼がいた 




「なんで…」




「猛、あんたキャプテンでしょ?

あんたが諦めたらこのチームはどうなるの?

あんたが引っ張っていくんじゃねぇのかよ!!!!!!

私は信じてるよこの試合の勝利を!!」








周りから笑われながらも蒼は言い切った





試合時間は残り一分





正直、ここから追いつけるとは到底思えない




だったら俺ができる事をするまで………!!





相手からのボールを必死に取ろうと動く




が、相手のパス回しに手も足も出ない



そのまま得点を決められ、時間は残り僅か




でも





俺は最後まで足掻きたいんだ





俺ができることを最後まで成し遂げたいんだ





味方の懸命なパス回しから俺にボールが回ってきた




もう迷わない





最後ぐらいカッコよく決めさせてくれ………





俺の願いとともに放たれたボールがリングを揺らすことは無かった






俺のバスケ人生はここでおしまいのようだ





長かったようで短かったバスケ漬けの日々





楽しかった思い出よりも辛かった思い出のほうが多い気がするのは気のせいかな




こっからは進路について考えないといけないのか





でも今日だけはバスケの思い出に浸ってたいな


 






どんっ 




「痛ってぇ」



突然後ろから何かにぶつけられた




「………………っ………っ」



よく聞くとそれはすすり泣きしている声だと分かった



「蒼………」




「………最後の…シュート、猛…らしくて……格好…良かった」


途中途中止まりながら、そう言ってくれた蒼




「猛…だって、泣きた…かったら…泣いて…いいんだよ」



そう言われた直後、今まで考えないようしてきた思い出が振り返り頬から涙がこぼれ落ちていた




辛かった記憶や悔しい過去が甦り、制御できずに涙が溢れ出ていた







どれくらいそうしていただろう






気づくと涙は止まっていて、振り向くと蒼は目を真っ赤にしながら笑った


「本当にいままで一番かっこよかったよ」



そういえば蒼がここまで素直に褒めてくれたことがあったかなと的外れなことを考えながら蒼のことを優しく抱きしめた




この日のことは一生忘れられない思い出となった
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