あの日の空にまた会えるまで。
後ろから聞こえた声に振り返るより先に、私の視界がグンと揺れた。
え、なに……?
突然の出来事に何が起きたのかを理解するのに一瞬時間がかかった。気付けば私は、蓮先輩に顔を覆うように大きな手を添えられその胸元に顔を寄せられていた。
「れ、れん先輩、なに…」
「静かにしてて」
更に強く引き寄せられる。その状態のまま蓮先輩は少しだけ体をずらして振り向いた。
次の言葉に、私は硬直した。
「ーーー奏」
ドクン、と心臓が脈打つ。
息を呑んだ。
「蓮じゃん。なにしてんの」
「見りゃわかんだろー」
「あぁー、デート?」
胸元で私を隠すように手を添えながら、蓮先輩は何気ない会話を進める。
蓮先輩は私を隠してくれているんだ。名前を呼ばれただけなのに一瞬にして奏先輩だと気付き、咄嗟に隠してくれた。
どうして気付かなかったのかな。この声はあの頃大好きなものだったのに。聞けば分かるその声に私は思わず唇を噛んだ。でないと、涙が溢れてきそうだった。
すぐそこに、目の前に、あの人がいる。
言葉にできない沢山の感情が心を埋め尽くしていく。
……ほんと、どうしていつも突然なんだろう。
覚悟も決意もなにも出来ていないのに、いつだって突然に現実は向こうからやって来る。
「彼女さん、何で隠れてんの?」
「んー…、ちょっと今顔見せれないから」
「なんで?」
「女の子には色々あるんだよ。相変わらず女心の分かんない奴だな。そんなんだから宝の持ち腐れって言われんだよ」
「うるさいな」
……なんだろう。普通の会話に違和感を感じる。
どうしてこんなに普通に話してるのだろう。2人は久しぶりの再会なはずなのに、まるで普通の友だちの会話をしている。
蓮先輩は、私と同じ期間、奏先輩とは会っていないはずなのに。
「あー蓮、こないだはいきなり電話して悪かったな」
ーーー電話?
「いいよ、別に。お前の悩んでる姿はいつ見ても笑えるし」
「それ、高校のときも言ってたな」
ーーー高校?
「まぁ、全部お前が悪いからだし」
「……知ってるっての」
どういうこと…?