擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー


「これは俺からの気持ち。亜里沙、すこしの間目をつむってて」

 目をつむっている間、彼に包まれている手に少しの違和感を感じる。

「目を開けていいよ」

 なにがあるのだろう。そんな期待で胸を高鳴らせながらそっと目を開けると、彼の手の中にある亜里沙の左手薬指には、ダイヤモンドのまばゆい輝きが……。

「雄大さん、これは……」

「婚約指輪だよ。今夜のために用意したんだ」

「ありがとう。うれしい」

「擬似結婚をしていたから渡すタイミングをはかりかねてて、今日になってしまった。遅くなってごめん」

「ううん、いいの。十分過ぎるくらいに幸せだから」

 素敵なレストランで食事しただけでもうれしいのに、こんなプレゼントをされるなんて想像もしていなかった。 
 
「今夜改めてきみにプロポーズするよ。河村亜里沙さん、俺と結婚してください」

『何度でもプロポーズするよ』

 あの言葉はうそではない。初めは社長室。次は九十九本の薔薇と一緒に。その次は社長秘書室で。

 そのすべてに亜里沙はきちんと応えを返していない。

 亜里沙は彼に手をさし述べて立ってもらい、改めて向き合った。彼の綺麗な瞳が少し潤んでいる。それをじっと見つめた。

「香坂雄大さん、ふつつか者ですが、末永くよろしくお願いします」

 彼の頬が緩んで、亜里沙を腕の中に閉じ込める。

「今度俺の両親に紹介するから」

「はい」

「今夜はここに泊まるよ。ふたりのいい夜にしよう」

 その夜はホテルのスイートルームに宿泊して、それも亜里沙の忘れられない夜となった。



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