擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「すっごく緊張しちゃった。私上手く話せてたかな?」
亜里沙はかちこちに固まった顔をほぐすように、ペシペシ叩いた。たった今、海外に住む彼の両親と、ネット回線を利用した通話で面会を果たしたところだ。
擬似結婚から擬似を取るための第一歩だけれど、亜里沙は緊張のあまりになにを話したのかあまり覚えていない。
ただ『息子をよろしく』と頼まれたのだけは、はっきり覚えている
それに対し、亜里沙はどう答えたのか……。
──お任せください、だったかな?
「ふたりとも亜里沙のこと気に入ってたから、大丈夫だよ」
パソコンの電源を落としながら、クスクスと笑っている。
「やっぱり、変なこと言ってた?」
「違うよ、亜里沙は緊張すると呼吸を忘れるんだ。それでだんだん鼻が膨らんで……」
「ああああっ、それ以上言わなくていいから!」
彼の両親がクスクス笑っていたのは亜里沙の変顔を見たせいと分かれば、もう恥ずかしくてたまらない。
「雄大さん、呼吸忘れてるよって、言ってくれればいいのに」