擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「香坂さん、ご結婚おめでとうございます。またイベント企画されるときは、弊社にお任せくださいませ。では、ごきげんよう」
相良はデザイナーらしきスタッフの元にいそいそと向かう。イベントを企画……ということは、イベント会社を経営されているのだろうか。
──イベント会社? なんだか覚えがあるような?
「彼女はああ見えて六十歳を超えてるんだ」
「えっ、ほんとですか」
皺もたるみもなく艶々した肌は、どう見ても三十代に見えた。
「あの方は雄大さんを好きなのかな? なんて思ってたの。連城さんのこともあったし、ちょっと警戒しちゃった」
「彼女は俺に恋愛感情は一切なくて、俺に嫁を紹介したがる面倒な人なんだ。やたら残念そうにしていたのは、見合い相手を紹介できなくなったからだよ」
「そうなんだ……」
亜里沙はようやく思い出していた。会員制のレストランに行ったとき、彼が言った言葉と表情を。
『イベント会社の女社長。結構なやり手で、見つかると厄介な人なんだ』
厄介というのは、そういう意味だったのだ。
「でもまあ、ここでばったり会ってよかったよ。もう見合い話に悩まされなくて済む」
心底安堵したような声は、今まで大量の見合い話を断ってきたのだろうと想像できた。
「香坂さま、指輪をお持ちいたしました」
振り返れば、カウンターの上には、柔らかそうなクッションの上に三連の豪華な指輪があった。