擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
 突然降ってわいた事態に思考が追い付かず、亜里沙の頭の中では疑問符ばかりが踊る。

「俺と一緒に住むことは、きみにとってもまったく問題ないと思うんだ」

 そう言いながら立ち上がった彼が亜里沙の隣に移動してくる。ソファのクッションがわずかに揺れて、亜里沙の体が震えた。

「もう、あのときみたいに逃がさないよ」

 整った顔がふと動いて、亜里沙にぐっと近づいた。

「あの夜のことも、忘れたとは言わさないから」

 顔だけでなく、声までもが甘くて、つい体がぞくぞくと震えてしまう。肩をそっと抱かれて手をぎゅっと握られると、亜里沙の胸の鼓動が跳ねあがった。

「あれは、その、覚えてますよ……もちろん」

 亜里沙とて忘れる筈がない。それほどに、彼は強烈な思い出をくれたのだから。

 あの夜のこと──それは今から二ヶ月ほど前のことで……。

< 3 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop