擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

『小浜館』は海岸線に建つ小さな民宿。

 繁華街から離れた場所にあるため観光客の賑わいも届かず、とても静かなのだ。宿泊費用がお手頃なのもそうだけれど、この落ち着いた風情がなにより気に入っていた。

 窓を開けると、寄せては返す波の音が耳に心地よく届く。

 のんびりした空気は時の流れを忘れさせる魔力がある。

 遠くにある『リレリパージュ』の外壁がやたらと白く光って見える。

 あのホテルから見える景色はここよりも素晴らしいのだろうか。

 窓辺に座った亜里沙は潮風を感じながらそっと目を瞑った。

 
 翌日から亜里沙はリゾートを満喫する。

 宿屋の主人に出してもらった船に乗って磯釣りを楽しんだり、海水浴をしたり、ここでしか味わえない郷土料理を食べたり。

 おひとりさまだから会話を楽しむ相手はいないけれど、存分に楽しんでいた。

 そんな三日目のこと。

 今日は買い物を楽しもうと決めて海辺の商店を巡っている。海岸傍にある道には食堂や土産物を売る店に、以前にはなかったお洒落なカフェもある。

 買い物に行くと言ったら、女将さんが話してくれた。

『二年前に映画の舞台になってから観光客が増えて、若者向けのお洒落な店が増えたんだよ~』

 観光客も増えて、嬉しいと笑っていた。

 フォトジェニックなスイーツや流行りのドリンクを売る屋台もあって、若い女子たちが自撮り写真を撮っている。

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