こんなにも愛しているのに〜それから

願わない再会

しかし
再就職先が決まった頃のこと、
茉里には言えなかった
出来事があった。
疚しい気持ちではなく
自分で自分の気持ちを整理できないほどの
感情の渦に巻き込まれたから、
とでも言おうか。

三谷、加藤と退職祝いということで飲んだ後、
俺も再就職先が決まり
その準備の傍ら
茉里との話し合いにほぼ時間を費やしていた。
自分としては
話の内容は重いことだが
茉里と会えるというだけで
とても大切な時間だった。

そういう忙しい時期に
三谷から連絡があり
少し時間をいただけませんか、
と畏まった口調でお願いをされた。
電話口で
三谷は本当に申し訳ないのですがと
何度も断りながら
これからのことを話したいので
今日の夜にでもお会いできたらと
尋ねてきた。

珍しく
キレが悪い話し方に
三谷も何か問題を抱えているのかも
知れないと
俺は心配して
指定された時間に
林田との会社時代、
みんなで
よく行っていた居酒屋へ向かった。

いい思い出がない居酒屋。
あれ以来
一度も足を向けていない。
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