こんなにも愛しているのに〜それから

樹の新しい生活

シンガポールでの生活は
仕事に慣れる
生活に慣れる
そのことに終始して
1年があっという間に過ぎた。

三谷や加藤が忠告してくれたように
’女難’
を避けるべく

フラットのクリーニングスタッフの人選も
人任せにせず
自分でチェックした。

会社の社員交流のホームパーティも
盛んに行われていたが
単身赴任の自分に余計な心配をかけないよう
なるべく不参加の方向で終始した。

人付き合いが悪いと言われようが
アフター5の誘いに女性がいると
さりげなく避け
誤解の対象にならにように
気をつけた。

すっかりと
’西澤さんの奥さんが嫉妬深いから、、、’
という噂が
定着したらしい。

一言もそういうことは言ったことがないのに、
噂とは身勝手なものだ。

茉里には機会があったら一度来ないかと
断られるのもわかっていて
連絡をするたびに一言添えていた。

もちろん
この一年、茉里が来ることはなかった。
俺が帰国するときには
連絡をして会いたかったが
断られるのが
怖くて
声もかけずに帰国して
会わずに戻る
そのパターンばかり。

一人で考えて
相手を思って
過ぎて行く日々。

会いたい。
茉里に会いたい。
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