こんなにも愛しているのに〜それから
「責任をとって、私と離婚して
彼女と結婚する?」

「そんなのは嫌だ。
彼女には悪いけど、本当にそんな気持ちは
微塵もなかった。
彼女が奥さんがいてもいい、
結婚できなくてもいい
一生日陰でもいいからって、、、
それなのに
この子を産みたいって、
迷惑はかけないから産ませてって。」

「どうするの?」

「認知だけはして欲しいって言われた。」

則文は頭を抱え込んで動かなかった。
一気に老け込んでしまったみたいだ。

小心者なのに
不用意に
自分の手に余るようなことを
しでかしてしまって。

私たちは
人の気持ちなんか考えない
似たもの夫婦なのかもしれない。

「このことは内密には進まないでしょう?
認知してほしいって言っているんだったら、
いずれ
お義父さんやお義母さんにもわかることよ。」

「親子二人充分に暮らせるように
援助はするから
認知はできないないって言った。
そしたら
泣き出されて、、、

あれだけ本気にはなれないって
言ったのに。
それでもいいからって、、、」

最後は苦しみに呻くように則文が言った。

則文の苦しみは私が蒔いた
禍のせいかもしれない。
妻として嘆き悲しみ怒るところだろうが
どうしても
則文を責める気にもなれなかった。
ただ
この苦しみから早く解放してあげたかった。

「少し私にも考えさせてくれる?

もう一度聞く。
私と離婚して、彼女と新たに生活を
共にしようとは、思わないの?」

「別れたくない。
確かに、ここ何年かは気持ちが
すれ違うばかりで
夫より仕事ができる妻を持つことに、
捻くれた気持ちを、持つこともあったけど、
仕事ができる人を好きになったのは
僕自身だから。
僕は変わらずヨシのことが好きだ。

ヨシの中に僕以外の人がいるんだろうな
と思うこともあって、、、

遠距離になってから、
ヨシの気持ちの中に僕がいないような気が
していた。
きっと
他に好きな男ができたのかな、、、って。」

西澤くんのこと。。。
則文は気づいていた。

「でも
ヨシは僕と結婚してくれた。
それだけで、よかった。
なのに、、、
彼女とは、魔がさしたとしか言えない。」

「狡いわね。
相手を妊娠させといて、魔がさしたなんて。」

私もあの日避妊しないで身体を重ね
西澤くんの子供ができていますように
って
毎日祈ってた。
もちろん
そんなこともなく、、、、

則文の彼女と私は同じ人間。

「則文、
彼女といつからそういう関係になったの?
それより
一体彼女はどういう人?、教えて。」

則文から
全てを聞き出した後、
疲労困憊している夫を
再度会社に送り出した。

私も醜い人間だからわかる。
彼女もきっと同類。
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